首相の所信表明演説に対する代表質問(首相答弁付き)

平成28年9月29日 参議院本会議
民進党・新緑風会 小川敏夫私は、民進党・新緑風会を代表して、安倍総理大臣に質問します。

本年7月に実施された参議院選挙にあたり、安倍総理は、「気をつけよう甘い言葉と民進党」という発言を繰り返し行いました。私は、国民の判断を求めるに当たって政治家は真摯な議論を行わなければならないと考えています。国民も同様に考え、政治家に真摯な議論を期待していると思いますが、安倍総理大臣のその発言は、国民の期待を踏みにじる大変に不真面目な発言であり、また具体性が何もない誹謗の類いの話であって、我が国を代表する一国の総理大臣の発言として誠に恥ずかしい限りの低俗なものであります。これでは、安倍総理大臣の資質を問わなくてはなりません。総理のご見解をお聞かせ下さい。

ところで、安倍総理、あなた自身が甘い言葉で国民を騙してはいませんか。以下についてお答え下さい。

安倍総理あなたは、勤労者の賃金を上げると約束しました。しかし、安倍総理就任後、厚生労働省の毎月勤労統計によりますと、民主党政権時代の平成22年を100とすると、実質賃金は、平成25年は98・3、平成26年は95・5、平成27年は94・6でしかありません。賃金は上がるどころか大幅に下がっているのです。総理は、ここ6ヶ月連続で賃金がアップしたと言いますが、5月はマイナスでしたが物価が下落したので実質賃金が上がったというものでしかありません。

また、総務省家計調査を見ますと、2人以上の所帯のうち勤労者所帯の所帯主の収入は、平成27年8月以降本年7月までの12か月間、本年4月を除いて前年より減少しています。又、勤労者所帯全体でも、平成27年10〜12月期以降同28年4〜6月期まで3四半期続けて収入は減少し、直近の本年4〜6月期は前年比で2・5%も減少しています。

安倍総理あなたは、年2%の率の安定的な物価上昇を約束しました。しかし、これも実現していません。その見通しさえ立っていません。このところ本年4月から7月の間は、消費者物価は対前年比で下落しています。

安倍総理あなたは、貿易収支を年8兆円の黒字にして国を豊かにし、国民の生活を豊かにすると約束しました。

しかし、平成25年は約11兆5千億円の赤字、平成26年は約12兆8千億円の赤字です。平成27年は約2兆7千億円の赤字、本年1月乃至8月までは約2兆3千億円の黒字になっていますが、これは、原油価格の下落という幸運によるところが大ですが、いずれにしろ年8兆円の黒字にはほど遠い実情です。

一方で、安倍総理あなたは、国の借金を増やしました。平成24年12月時に約804兆円であった国債発行残高は、本年6月には約909兆円に増加しています。その他借入金等を加えた国の借金は約1053兆円にも上っています。
総理あなたは、プライマリーバランスの2020年の黒字化を掲げましたが、実現できるでしょうか。実現見込みの無い単なるかけ声ではありませんか。

総理、これでは、国民に注意を呼びかけなくてはならない対象は、民進党ではなく、総理あなた自身なのではないですか。私は、「気をつけよう甘い言葉と安倍総理」と言葉を返させて頂きます。

以下具体的に質問します。

先ず、勤労者の賃金低下について質問します。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によりますと、安倍政権になって以来、勤労者の実質賃金は下がる一方で、現状は民主党政権時代と比較して5%程度下がっています。安倍総理、勤労者の一部にベースアップがあったことだけを取り上げて、あたかも勤労者全体の賃金が上がっているように言うごまかしは止めて下さい。

そこで、質問します。アベノミクス以降、何故、勤労者の賃金が下がっているのか、その原因がどこにあるのか、総理の理解をお示し下さい。

また、勤労者の実質賃金は平成12年頃から低下傾向となりました。平成12年から平成27年の間、民主党政権の時期などの一時期を除いて賃金は低下し続け、107・2ポイントから94・6まで下落しています。この長期的賃金下落の原因についても、総理の理解をお示し下さい。

私は、勤労者の賃金が下落している主因は、派遣労働の制限緩和などによる雇用の非正規化にあると思っています。ですから、私は、勤労者の賃金を回復するために、派遣労働の制限を以前のように強化して雇用の正規化を推進することが必要だと考えていますが、総理、そのようには思いませんか。お答え下さい。

また、総理は、非正規雇用という言葉を一掃しようと豪語しました。非正規雇用を増やしてきた安倍総理の言葉として私は驚きを隠せませんでしたが、そこでお尋ねします。具体的にどのような方策によって非正規雇用を一掃するのでしょうか、お答え下さい。

総理は、勤労者の賃金下落について問われますと、総雇用者所得というアベノミクス以前には聞かないような言葉を持ち出して、それが増加しているから社会全体では賃金は増加していると言って、賃金下落を否定するような説明をしています。

アベノミクスにより雇用者が増加したところ、新規雇用者は給与が低い傾向にあるので、全体を平均すると下がってしまっているだけだという説明です。

その例え話として、夫が月給50万円のところ、景気が良くなったので妻がパートに出て月25万円の給与を貰うことになった。その結果、所帯としては給与は増えているけれども平均給与は下がったと説明しました。

この説明について述べますと、妻がパートに出るのは生活が苦しくなったからでしょうし、パートが25万円もの月給を貰えるような現状ではありません。総理が如何にパートの実情を理解していないかと云うことを如実に表しています。

話を戻します。総理、実質総雇用者所得を算出してみますと、増えていませんでした。低下しています。平成24年を100として比較すると、平成26年は99、平成27年は99・5でしかありません。

安倍総理あなたは、総雇用者所得が名目、実質とも増えていると説明して来ましたが、これは間違った説明ではないでしょうか。お答え下さい。

このように、働く人が増えた一方で全体の総賃金が実質下がっているのですから、アベノミクスによって、勤労者の賃金は下落してしまっているのです。

安倍総理、今我が国経済が停滞している一番の要因は、消費が伸びないことではないでしょうか。

総務省の家計調査によりますと、平成12年から平成27年までの15年で、2人以上の所帯の消費支出は、31万7328円から28万7373円に減少しています。勤労者所帯の消費支出は、34万1896円から31万5379円に減少しています。又、その間の勤労者所帯の実収入は、56万2754円から52万5669円に減少しています。

その一方で、賃金負担が減少した企業は利益を拡大して、内部留保が、同期間におよそ200兆円も増加しています。

総理、消費を伸ばし、景気の活力を取り戻す本筋は、このような悪循環、即ち勤労者の収入が減少し、その結果消費が減少するという悪循環を断ち切ることではありませんか。勤労者の賃金が低下する政策を止めて、雇用と賃金が安定するために雇用の正規化を進める必要があり、これが景気回復を実現する真の景気対策だと提案しますが、いかがでしょうか。

総理は2%の率の安定的な物価上昇を2年程度で実現すると約束しました。しかし、消費税引き上げの影響を除き、全く実現できていません。実現する目処も立っていません。それどころか、本年に入ってからは、物価は下落しています。これでは、総理が約束した2%の率の安定的物価上昇政策は失敗し破綻したと言うしかありません。この破綻の原因を原油の下落にかこつけてはなりません。

原油価格が物価を押し下げた比率は最大時には0・9%と試算されています。この原油由来の物価引き下げ効果最大時0・9%を控除しても、2%の物価上昇率には全く達成していません。

そして、原油価格の下落は平成27年2月には底を打ち、以降は低位で上下しています。原油下落の一時的要因があって、一時的に一定の影響を与えたことはあるでしょうが、原油価格の下落が、2%の率の安定的な物価上昇の実現を妨げているものとは言えません。

総理、原油価格の下落以外に、2%の率の安定的物価上昇が実現できなかった本質的な要因は何であると理解しているでしょうか。合わせて、足下の消費者物価が下落していることについても、その要因についてどう理解しているでしょうか。お答え下さい。

この点を具体的に明確に説明できないとすると、そもそも日銀による資産買入れという金融緩和によって2%の率の安定的物価上昇を達成するというアベノミクスが、実は全く効果を生まない空虚なもので、間違いであったと言うことに他なりません。

かつて、日本軍は、敗北の結果撤退したことを、国民に対し、敗北の事実を隠蔽し転進と説明しました。

今、日銀は、2%の率の安定的物価上昇政策を維持するといいながら、時期を明示すらしないで長期目標と説明をすり替えています。しかし、異次元緩和などといって大がかりな金融緩和政策で実現できなかった明確な失敗を、理由を説明しないし、出来ないまま、長期目標にすり替えて誤魔化すのは、敗北を転進といって国民を誤魔化した旧日本軍大本営と同じやり方でしょう。

総理、2%の率の安定的物価上昇が何故約束した2年程度の間に実現できなかったのですか。その理由について、ご説明下さい。又、原油の下落は理由になりませんので、原油の下落以外にどのような要因が実現を妨げたのか説明下さい。そして、この政策が誤りではなかったのかご見解をお示し下さい。失敗を認めずに今後もこの政策を続けるのですか。そうであるなら、具体的にどういう方策で何時までに実現するのかご説明下さい。

安倍総理、あなたは、昨年9月に新安保法案が採決された際、これからも同法律について国民に丁寧に説明をしていくと約束しました。しかし 私が知る限り、丁寧な説明がなされているようには思えません。総理、どうでしょう、これから国民に丁寧に説明する考えはありますか。お答え下さい。又、総理が考える丁寧な説明とは、具体的にどのような説明を考えているのでしょうか。お答え下さい。

安倍総理、あなたは、私の知るところ、この夏の参議院選挙では、憲法改正に関しては党の政策集のごく一部に抽象的に記載しただけで、総理自身の言葉では国民に対して何も語りませんでした。国会においても、自民党の憲法草案について答える立場にはないとして、答弁を拒否してきました。

ところが、選挙後の記者会見では、憲法改正について「如何に我が党の案をベースに3分の2を構築していくか、これがまさに政治の技術だ」と発言しました。

国民に総理自身の言葉で憲法改正について問いかけることなく、選挙で数を得たから手続を進めてしまおうと言うことなのでしょうか。総理、この夏の参議院議員選挙において、憲法改正について自らの口で語らなかったことについて、その考えをご説明下さい。

また、国民に語らないままで選挙さえ済ませれば良いというのが政治の技術なのでしょうか。総理が言うところの政治の技術とはどういうことを言うのかご説明下さい。

そして、憲法改正について、自民党の憲法改正案をベースにという総理自身の憲法改正に対するお考えをご説明下さい。

安倍総理、あなたは、米国大統領選がクリントン氏とトランプ氏との間で熱を帯びた戦いを繰り広げている中、本年9月19日、一方の当事者であるクリントン氏と会談しました。これは、我が国の首相がクリントン氏を支持していると捉えられかねない行動であり、トランプ氏を支持する米国民からは批判を呼ぶこともありましょうし、選挙戦の結果トランプ氏が勝利して大統領に就任した場合のリスクがあります。又、他国の選挙には干渉しないという外交上の礼儀に反するものではないでしょうか。安倍総理のお考えをお聞かせ下さい。

本年の参議院議員選挙の直前から選挙期間中に、大分県警の警察官が、労組等が使用する建物に秘密裏にビデオカメラを設置し撮影し、出入りする人物を無断撮影した事件が発覚しました。

警察は、必要性相当性に欠けた行為であったと述べていますが、このような国民を監視する、或いは選挙への不当干渉と見られる行為が繰り返されてはなりません。再発防止の徹底について総理のご見解をうかがいます。

沖縄県に所在の北部訓練場内のヘリパッド建設に関し、地域住民らによる強い抗議が続いています。又、警察等による対応が強行過ぎるとの批判が強くあります。北部訓練場の一部返還は好ましいものでありますが、返還の条件とされたヘリパットの建設と運用によって地域住民が生活上の不利益を被るのですから、事前の説明や意見聴取、協議を十分に行うことが必要だと考えます。

返還予定地域について具体的且つ急を要する使用予定も無いのですから、強硬手段によらないで、地域住民との信頼関係の醸成に配慮した対応が必要だと思いますが、どうでしょうか。又、地域住民の不利益回避のために米軍との協議を含め、あらゆる努力をするのが政治の責務だと思いますが、総理いかがでしょうか、お答え下さい。

安倍総理、あなたは国境警備の海上保安官、警察官、自衛官に敬意を表そうと訴えました。私も、同じように職務に精励している自衛官らの方々に敬意を表する気持ちであります。加えて、私は、消防官、医療、介護、バスやタクシーの運転手、勤労者、その他社会の様々な分野で働き社会に貢献している方達全員に敬意を表する気持ちであります。

総理あなたが自衛官らだけを特別に取り上げて尊敬の対象とするのは、総理あなたの心の中に国民よりも軍隊優先という考えが潜んでいるからでは無いでしょうか。

ところで、本年8月23日、稲田防衛大臣は、ハイヒールを履いて護衛艦に乗船し、視察しました。厳しい任務の実情をわきまえない不見識な行動であり、防衛大臣の適格性を欠いていると思いますが、総理のご見解をお尋ねします。

以上が私の質問です、総理の答弁によっては再質問を行います。

【答弁】

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小川敏夫議員にお答えをいたします。

私の参議院選挙期間中の発言についてお尋ねがありました。

選挙において、各政党のリーダーは、街頭に出て、自らの政策と他の政党との違いを分かりやすい言葉で語り、他の政党との違いを分かりやすい

言葉で語り、国民に支持を訴えます。そして、その発言はメディアを通じて日本中に発信されます。したがって、一つ一つの発言は選挙結果にも大きく影響を与え得るものであり、責任の伴うものであります。御指摘の発言も含め、私の選挙期間中の発言はそうした認識の下に行ったものであり、その上で今回の参議院選挙で国民の審判をいただいたものと考えております。

そして、今回の選挙の結果、私たちは改選過半数という目標を大きく上回る信任を国民の皆様からいただくことができました。自民党と公明党の連立与党は、その国民の負託に応え、今後とも言ったことは必ず実現する、言葉を語るだけではなくしっかりと結果を出す政治に邁進する決意であります。

実質賃金についてお尋ねがありました。

安倍政権では、これまでデフレからの脱却を目指し、雇用の拡大、賃金の上昇による経済の好循環を生み出すべく全力を傾けてまいりました。その結果、中小企業を含め今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続実現し、名目賃金は平成二十六年春以降増加傾向、実質賃金もプラスに転じ、六か月連続で前年同月比プラスとなりました。

安倍政権では実質賃金が減少したとおっしゃりますが、これは消費税率引上げに加え、デフレ脱却に向かう過程で物価が上昇したこと、景気が回復し雇用が増加する過程においてパートで働く方が増えたことによるものであり、つまり雇用が拡大し、物価が上昇基調に転じている状況でのものと考えます。名目賃金での推移を見ますと、民主党政権、二〇〇九年―二〇一二年はマイナス、安倍政権はプラスであります。

また、繰り返しになりますが、足下では、一人当たり平均賃金で名目賃金も実質賃金も増加傾向となっており、特に、実質賃金は今年二月以降、六か月連続のプラスであります。特に、今年六月はプラス二・〇%、七月はプラス一・八%と高い伸びを示しています。

これは物価の下落だけを原因として達成されるものではありません。特定の月だけを見て、物価がマイナスだったから実質賃金が上がったという指摘は、現在の経済状況を正面から見ない誤ったものと言わざるを得ません。

家計収入が減少しているとの指摘についても、この調査における収入は勤労者世帯の一世帯当たりの状況を明らかにするものであり、全ての雇用者一人当たりの賃金の状況を表すものではありません。今後も、アベノミクスの加速化を強力に進め、雇用の拡大と賃金の上昇による経済の好循環の流れを確かなものにし、社会全体の所得の向上に全力を尽くしてまいります。

消費者物価についてのお尋ねがありました。

政権交代後、アベノミクス三本の矢によって、二十年間続いたデフレからの脱却にチャレンジし、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができ、デフレ脱却まで……(発言する者あり)済みません、今説明をしておりますから、少し静かに聞いていただきたいと思います。デフレ脱却まであと一息のところまで来ています。二%の物価安定の目標の実現を阻害した要因について、日本銀行は、総括的な検証の中において、原油価格の下落、消費税率引上げ後の需要の弱さ、新興国経済の減速等であると説明していると承知をしております。

こうした中で、消費者物価の総合では、原油価格の下落もあり、御指摘のとおり、本年四月から七月の間、前年比マイナスとなっていますが、生鮮食品やエネルギーなどを除いた物価の基調を表す消費者物価指数のコアコアを見ると、依然として、二〇一三年十月以降、前年比三十四か月連続のプラスとなっているほか、GDPデフレーターの前年同期比は十四半期連続でプラスとなっています。このように、デフレ脱却に向けた歩みは着実に前進していると考えています。

貿易収支についてお尋ねがありました。

私が三年前に海江田代表との党首討論で申し上げたのは、行き過ぎた円高が解消されるなどの仮定を置けば、貿易収支が黒字に転じ、経常収支も二年後には八兆円のプラスになるとの試算でした。

その後、新興国や資源国の需要が減速するなど、国際経済環境は大きく変化しました。このため、現実には必ずしも試算どおりではありませんでしたが、貿易収支はいまだ弱さが見られるものの、昨年十―十二月期から三、四・四半期連続で黒字となり、その幅も拡大しており、民主党政権以来続いてきた赤字傾向を反転することができました。

さらに、経常収支の黒字は、昨年、八兆円を上回り、十六兆円に達したところであり、大幅に改善したと認識しております。

プライマリーバランスの黒字化についてお尋ねがありました。

安倍内閣においては、国、地方を合わせた税収は二十一兆円増加し、新規国債の発行額を十兆円減らし、国の一般会計プライマリーバランスを十四兆円改善させました。二〇二〇年度にプライマリーバランス黒字化を実現するという財政健全化目標を堅持し、その実現に向け、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、未来への投資を実現する経済対策を始めとする強い経済の実現を目指した取組を進めていきます。

これまでも、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化など歳出削減にも取り組んできたところであります。この結果、社会保障関係費についてはその実質的な伸びを年平均五千億円に抑えることができるなど、歳出改革の取組は着実に成果を上げております。引き続き、経済・財政再生計画の枠組みの下、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組を強化してまいります。

また、二〇一八年度時点で、目標達成に向けた歳出改革等の進捗状況を評価し、必要な場合には、デフレ脱却、経済再生を堅持する中で、歳出、歳入の追加措置等を検討することとしています。今後とも、経済・財政一体改革を不退転の決意で断行し、経済再生を図りながら、二〇二〇年度におけるプライマリーバランスの黒字化を実現してまいります。

勤労者の賃金下落の原因についてのお尋ねがありました。

勤労者の実質賃金については、平成十二年から平成二十七年の間、減少していますが、これはパートで働く人が増えたことなどによるものと考えています。安倍政権では実質賃金が減少したとおっしゃいますが、繰り返しになりますが、これは消費税率引上げ、三%の引上げに加え、デフレ脱却に向かう過程で物価が上昇したこと、景気が回復し、雇用が増加する過程においてパートで働く方が増えたことによるものである、つまり、雇用が拡大し、物価が上昇基調に転じた状況でのものであると考えております。

民主党時代は、デフレの下、名目賃金が減少しても、物価が下がっていたことにより、実質賃金が増加しているだけの状況でありました。それに対し、安倍政権では、もはやデフレではないという状況をつくり出し、足下では、名目賃金は平成二十六年春以降増加傾向にあり、実質賃金も六か月連続で前年同月比プラスとなっているということをはっきりと強調しておきたいと思います。

非正規雇用の一掃に関するお尋ねがありました。

非正規という言葉を日本国内から一掃すると私が言っているのは、どの働き方を選択しても、しっかりした処遇を受けられるようにし、人々が自分のライフスタイルに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにするということであります。

これを実現する具体的な方策としては、どのような賃金差が正当でないと認められるかを、年内を目途にガイドラインを作って具体的に明らかにし、さらに、賃金差について裁判で争われた場合に、裁判所の判断の根拠となる規定を整備することなどを含め、法改正についてちゅうちょなく行ってまいります。

なお、昨年成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については、待遇の改善を図るものであり、施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。

総雇用者所得についてお尋ねがありました。

国民みんなの稼ぎである総雇用者所得は、名目で見ても、実質で見ても、十三か月連続で前年比プラスになっています。また、御指摘の実質総雇用者所得について、民主党政権下の二〇一〇年から二〇一二年までの平均値と安倍政権下の二〇一三年から一五年までの平均値を比較すると、ほぼ同水準であります。

我々の数字は、民主党政権時代には三%消費税上がっておりませんが、安倍政権においては三%消費税を上げたにもかかわらず、平均値は同じだということであります。それは、その分所得が上がっているということを意味することは明らかであります。

小川議員からは、これまでも、何度も実質賃金や実質総雇用者所得について国会で御議論をいただいております。そういう中で、本日も、ごまかしている、間違った説明をしている、甘い言葉で国民をだましているとの指摘をいただきましたが、データの事実に基づき、アベノミクスの成果について誠実かつ丁寧に説明を行ってきているところであります。

その結果、二〇一二年の政権奪還後、一三年の参議院選挙、そして一四年の衆議院選挙、さきの参議院選挙で、それぞれ国民から力強い支持をいただいたと、このように理解をしております。今後とも、客観的なデータ等に基づき、建設的な政策論議を行ってまいりたいと考えております。

雇用の正規化についてお尋ねがありました。

アベノミクス三本の矢の政策により、政権交代後、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出しました。また、生産年齢人口が減少していく中でも雇用を拡大し、安倍政権発足時から比べて、名目GDPは六・九%、実質GDPは二・七%増加しています。また、過去最高水準の企業収益を雇用の拡大、賃金の上昇につなげることにより、正規雇用が昨年、八年ぶりにプラスに転じ、二十六万人増加しました。賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現しています。実質賃金もプラスに転じ、先ほど申し上げましたように六か月連続でアップするなど、経済の好循環が生まれています。

個人消費は、二〇一六年一月―三月期、四月―六月期と二四半期連続で前期比プラスとなるなど、総じて見れば底堅い動きとなっています。こうした状況を更に推し進めるために、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を断行してまいります。同一労働同一賃金の実現やこれまでの賃金体系の見直しに踏み込んで、非正規の方の処遇を改善し、中間層の厚みを増すことで、所得の底上げ、消費の拡大につなげてまいります。

二%の物価安定の目標についてのお尋ねがありました。

政権交代後、二十年間続いたデフレからの脱却にチャレンジしてきました。三本の矢の政策を進めることにより経済の好循環は着実に回り始め、現在はデフレではないという状況をつくり出すことができたのは事実であります。足下の消費者物価について、物価の基調を表す消費者物価指数のコアコアでは、前年比三十四か月連続のプラスとなっており、デフレ脱却に向けた歩みは着実に前進をしています。二%の物価安定の目標の実現を阻害した要因について、日本銀行は、総括的な検証の中において、原油価格の下落、そして消費税率引上げ後の需要の弱さ、新興国経済の減速等であると説明していると承知しております。そうした検証を踏まえて、今回、日本銀行は、金融緩和を強化するための新しい枠組みの導入を決定したところであり、これは二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するためのものであると理解しております。

いずれにせよ、金融政策の具体的な手法は日本銀行に委ねられるべきであると考えており、黒田総裁を信頼しております。

引き続き、政府、日本銀行は緊密に連携しながら、あらゆる政策を総動員してデフレ脱却、そして力強い成長を目指してまいります。

平和安全法制に関する国民の皆様への説明についてのお尋ねがありました。

平和安全法制の成立後も、私自身、そして関係閣僚も様々な機会を捉えて説明に努めています。また、首相官邸のホームページを通じて法制の必要性や趣旨、目的、具体的内容について御説明を行っています。もちろん、与党としても、議員一人一人が全国各地で街頭に立ち、あるいは後援会等の場を通じてしっかりと説明を行うなど、地道な取組を行っております。

そして、何よりも、参議院選挙において街頭演説等で、私は必ず、必ず平和安全法制についてお話をさせていただきました。その結果、先ほど申し上げましたように、改選議席の過半数を与党で大幅に上回る議席を得ることができたわけでございます。

このように、国民の皆様に対し、様々な機会を通じて自らの言葉で分かりやすく説明する努力を継続していくことこそが丁寧な説明であると考えております。そして、こうした努力により、さきの参議院選挙において国民の皆様の信任を得ることができたと、このように考えております。今後とも、国民の皆様に一層の御理解をいただけるよう努力を続けてまいります。

憲法改正についてのお尋ねがありました。

まず、明確にしておきますが、憲法改正は自民党の党是であり、その考え方は草案という形で国民の前にお示しを既にしております。国政選挙に際しては正々堂々と公約に掲げてきており、御指摘は当たりません。

憲法改正は、最終的には国民投票によって国民が決めるものですが、まずは国会の憲法審査会という静かな環境において各党がそれぞれの考え方を示した上で真剣に議論し、国民的な議論につなげていくことが必要です。考え方や立場の異なる者同士が正々堂々と議論し、合意を形成していくプロセスこそが政治であり、国民の負託を受けた我々政治家は、そのために知恵を絞り、合意に至る努力を真摯に積み重ねていかなければならないわけであります。

私が申し上げた政治の技術とは、しっかりと例えば党内においても合意を形成する努力をしていく、あるいは他党との合意を形成していく努力をしていくことであります。政治の技術がない政党が政権を取るといかに混乱に陥るか、これは既に私たちが十分に経験したことであるということは申し上げておきたいと、このように思うところでございます。

クリントン元国務長官による表敬についてお尋ねがありました。

国連総会でニューヨークを訪問した際に、私は、クリントン元国務長官の表敬を受け、日米同盟強化の方途、北朝鮮、中国や海洋を含む地域情勢等について幅広く意見交換を行いました。今回の表敬は、クリントン元国務長官の発意を受けて調整し、実現したものです。

日本政府が米国の大統領選挙に中立であることには変わりはありません。次の大統領が誰になるにせよ、日米同盟は日本外交の基軸であり、アジア太平洋や世界の平和と繁栄のため、米国と緊密に協力していく考えであります。

大分県警における不適正捜査についてのお尋ねがありました。

お尋ねの事案は、警察の捜査に対する国民の信頼を著しく損なうものであり、誠に遺憾であります。警察には、国家公安委員会の管理の下、再発防止を徹底し、適正捜査の一層の推進に努めてもらいたいと考えております。

北部訓練場の返還についてお尋ねがありました。

北部訓練場、四千ヘクタールの返還のため、〇・九六ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設する必要がありますが、その際、移設により影響を受ける方々に十分な配慮を行うことは当然のことであります。このため、これまでも地元の皆様と密接な意思疎通を図ってきております。地元の国頭村や東村からは、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして早期返還の要望を受けていますが、日米合意から二十年間、返還は実現しておらず、もはや先送りは許されません。引き続き、地元の皆様との信頼関係の下、関係法令に従って所要の移設工事を進め、速やかな返還の実現に全力を尽くしてまいります。

また、米軍による航空機の運用に当たっては、公共の安全に妥当な配慮を行うのは当然のことであります。今後とも、安全面に最大限の配慮を行い、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう、米軍と密接な連携を図りながら万全を期してまいります。

海上保安官等に敬意を表することと防衛大臣の部隊視察についてのお尋ねがありました。

最初に申し上げます。海上保安庁と警察は軍隊ではありません。また、自衛隊は通常の観念で考えられる軍隊とは異なるとの政府見解は当然御存じのことと思います。その上で申し上げれば、海上保安庁、警察、自¥衛隊の諸君は、ただひたすら国民を守るため、厳しい任務に就いています。そして、私は、所信表明演説の中において、まさに東アジアの安全保障環境が厳しくなる中において緊張感に耐えながら任務に当たっている方々について言及したわけでございます。その文脈を十分に御理解をいただきたいと、このように思います。国民の命を守るためにこそ自らの命を懸けているわけでありまして、そして、それが彼らの誇りでもあります。

我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることは小川議員にも十二分に共有していただけるものと思いますが、所信表明においては、このような困難な状況の中で、国民のため、それぞれの現場において厳しい任務を全うする海上保安庁、警察、自衛隊の諸君に対し、心からの敬意を表そうと申し上げたものであります。国民よりも海上保安庁、警察、自衛隊が優先するなどという考えは根本的に間違っているだけではなく、彼らの誇りを傷つけるものでもあります。小川議員の御指摘は、かつて政権を担い、閣僚を務められていた方の御発言であるだけに大変残念であります。

なお、そうした厳しい任務に当たっている自衛隊の部隊を稲田防衛大臣が視察した際に不見識な行動があったとは全く考えておらず、御指摘は全く当たりません。

以上であります。(拍手)

【再質問】
○副議長(郡司彰君) しばらくお待ちください。

小川君から再質疑の申出があります。これを許します。小川敏夫君。

〔小川敏夫君登壇、拍手〕

○小川敏夫君 再質問を行います。私、足下の消費者物価の下落について、特にそれを取り出して質問いたしました。すなわち、二%の物価上昇が少し足らないということではなくて、今年に入って消費者物価が下落しているということは、この二%の上昇目標が破綻しているのではないかという観点から非常に重要な事項なので、なぜ今年に入ってから足下の物価下落がしているんですか、その要因についてお尋ねしたんですが、少し不明確でよく分かりませんでしたので、重ねてその点の答弁をお願いいたします。以上でございます。(拍手)

〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 足下の消費者物価については、先ほど既に明確にお答えをしているとおりでございますが、もう一度答弁をさせていただきたいと思います。これは同じことになるわけでありますが、足下の消費者物価について、物価の基調を表す消費者物価指数のコアコア、つまり、これは原油価格、そして生鮮食料品を抜いたものでありますが、コアコアでは前年比三十四か月連続のプラスとなっているわけでありまして、デフレ脱却に向けた歩みは着実に前進しております。(拍手)