参議院法務委員会 再犯の防止等の推進に関する法律案 質疑

○委員長(秋野公造君)再犯の防止等の推進に関する法律案を議題といたします。
まず、提出者衆議院法務委員長鈴木淳司君から趣旨説明を聴取いたします。鈴木淳司君。

○衆議院議員(鈴木淳司君)ただいま議題となりました再犯の防止等の推進に関する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

本法律案は、国民の理解と協力を得つつ、犯罪を犯した者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止等が犯罪対策において重要であることに鑑み、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するため、再犯の防止等に関する施策を国を挙げて推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

第一に、この法律は、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、国民が犯罪による被害を受けることを防止して、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とすることとし、犯罪をした者等及び再犯の防止等について定義を設け、基本理念、国等の責務などについて定めるものとしております。

第二に、再犯の防止等に関する施策の推進の仕組みとして、政府が再犯防止推進計画を定め、省庁横断的に施策を行うこととすることとともに、地方公共団体においても地方再犯防止推進計画を定めるべき努力義務の規定を設けることとしております。

第三に、国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、七月を再犯防止啓発月間とし、その趣旨にふさわしい事業を実施することとしております。

第四に、再犯防止推進計画で定めることとされている項目に対応して、再犯の防止等に向けた教育及び職業訓練の充実、犯罪をした者等の社会における職業及び住居の確保等、再犯の防止等に関する施策の推進のための人的及び物的基盤の整備並びに再犯の防止等に関する施策の推進に関するその他の重要事項の四つの分野について、国が各種施策を行うべきことを定めるとともに、地方公共団体にも、地方の実情に合わせて施策を行うべき努力義務の規定を設けることとしております。なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

以上が本法律案の提案の趣旨及び内容であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。以上です。

○委員長(秋野公造君)以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。

○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。

まず、こうした犯罪を犯した者が社会に復帰するということの施策に取り組んでこられました提案者の皆様方に深く敬意を表します。

そうした理念は私も全く賛成なのでございますが、今回出された法律の規定の仕方とか、そうしたことについてお尋ねしたいことがありますので、質問させていただきます。

まず、この第二条で、言わばこの対象者ですが、「犯罪をした者等」という者が対象者となっておるんですけれども、私としては、この書きぶりですと微罪も入る、それから司法で有罪認定されていない者も入る、あるいは四十年、五十年前の、昔の、はるか過去に犯罪を犯した者も入るというふうに読めますものですから、非常にこの対象範囲が広過ぎるのではないかと、このように思っておるんですが、いかがでございましょうか。

○衆議院議員(山下貴司君) 小川先生、ありがとうございます。小川先生は法曹の大先輩でして、かねてから尊敬申し上げておりますし、また、この原案を作りました超党派の再犯防止議連でも本当にメンバーとしていろいろ御示唆いただいておりまして、また大変感謝しております。

御指摘のところ、まさに先生の御懸念、共有するところではございますけれども、そもそもこの基本理念、本法におきましては三条の二におきまして、特性に応じた必要な指導、支援を受けられるように行うであるとか、そういった必要に応じて犯罪をした者に対していろんな施策を行うことを念頭に置いております。

そうだといたしますと、この犯罪をした者というものは入口支援というニーズもございます。幅広く捉えて、ただ、ニーズに応じた支援をするということでございますから、不必要な支援ということはしないということは前提に置いておりますので、このように間口を広く捉えさせていただいたということでございます。

○小川敏夫君 では、ひとまずこの議論は、また後で戻るかもしれませんけれども、言わば、非常に幅広い、私から思うとほとんど無限定、あるいは見方によってはもう国民全員が対象者になるような仕方だと思います。

具体的には、先ほどもお話しした、また繰り返しになりますけれども、例えば軽犯罪法も入る、あるいは未成年者の喫煙や飲酒の違反も入る、道路交通法違反も入ると。しかも、そういうことで処罰された者以外にも、処罰されなくたってそういうことをやっている者も入るということですから、まあ恐らく国民の中で全くそうした法令に違反しない人はいないんじゃないかというようにも思うんですけれども、まあ非常に範囲が広いということを取りあえず指摘しておきますが。
それで、こうした、この犯罪した者を対象に、二十一条の方でお尋ねします。一言で言いますと、国が必要と認めた場合には指導と支援を行うことができるとあります。

順番に聞きますが、こうした指導と支援を行う国の機関ですが、ここは警察は入るんでしょうか。

○衆議院議員(山下貴司君) まず大前提といたしまして、本法につきましては、その本法に基づいて直接指導や支援の具体的な権限が認められるわけではございません。そういった意味で、指導、支援といいますのは、ほかの法律に根拠がある場合は別といたしまして、基本、これはもう法令用語の辞典にも載っておりますが、任意の措置ということになっております。こういった指導の例としては、例えば薬物の依存ある者や高齢者に対しての薬物依存離脱プログラムの指導であるとか、福祉施設への入所や生活保護の申請に結び付けるような指導や支援というものも含んでおります。そういった情報提供の主体として様々な主体が考えられると思うんですが、そういった情報提供、指導又は支援ということでやるものとして、情報提供ということでは、あくまで任意ということでございますけれども、様々な主体、警察ももちろん、こういったところに行ってはどうだとかいうことはアドバイスということであろうかというふうにも考えております。

○小川敏夫君 ですから、指導、支援を行う機関として警察も入るということでございますね。

○衆議院議員(山下貴司君)もちろん一般的に権限を与えるものではないというふうな前提でございますけれども、そういったニーズに応じてそういったアドバイス等の支援を与えるということは、例えば家族に対する連絡であるとかそういったものについて支援を与えることはあり得ようかと考えます。

○小川敏夫君 警察庁法で、犯罪の予防に関する事務は警察庁法の所掌事務なんですよ。これも再犯者の防止、犯罪を犯した者を対象に新たな犯罪を予防するための法律ですから、当然、私はこの警察の所掌事務の中に犯罪の予防ということで含まれると思うんですよね。答弁者も、結論からいえば、この指導、支援を行う国の機関として警察が入るということはお認めになっていらっしゃるわけですよね。
それで、次にお尋ねするのは、この二十一条で、適切な指導及び支援を受けることがと、再犯の防止等に有効であると認められる者について指導、支援を行うとあるわけですが、この有効であると、指導、支援が有効であると認める主体はどなたですか。

○衆議院議員(山下貴司君)これは、まず、この法律の立て付けというのは、特定の者に指導及び指導権限を与えるものではなくて、まず第一に国が再犯防止推進計画というものを策定して、その中で、例えば地方も、義務ではございませんが、計画というものを策定することになるんであろうと。そういった中で一定のカテゴリーについて行うということでございますが、これはあくまで、この理念、基本理念の三条二項にございますように、その特性に応じた必要な指導、支援を受けられるようにということで考えております。ですから、必要でない指導、支援については当然念頭に置いていないところであります。

そうした中で、どういう場合にこういった指導又は支援というのがこれは再犯の防止あるいは円滑な社会復帰の実現に適当であるかということについては、例えばその計画の中で一定のものが規定されることもありましょうし、これに基づいて具体的な指導、支援が行われるものというふうに期待しております。

○小川敏夫君 私の質問に答えていらっしゃらないですよね。要するに、この指導、支援を行う主体として警察が入るということで、その次の質問として、この指導が必要だと認める主体は誰ですかと聞いているわけです。具体的に言えば、指導、支援を行う機関がそうした判定をするんじゃないですかと聞いているわけです。

○衆議院議員(山下貴司君)全体の枠組みとしては先ほど言った計画というところでありますけれども、もちろんこういうものが有効ではないかということについて、この指導又は支援というのは、あくまでこれは別の法律のあれがない限りは任意ということでございますから、そういったことでするということはあろうかと思います、先生御指摘のように。

○小川敏夫君 いやいや、私は、こういう指導、支援をするという主体に警察が入ると、指導、支援が必要だと認めるのはその指導、支援を行う警察だと、こういうふうに私は読める、私はこの条文を読むんですがね。

ですから、私が聞いているのは、指導、支援を行う主体として警察が入ると、指導、支援を必要と認めるかどうか、それは警察が判断するんでしょうと、こういうふうにお尋ねしているわけです。だから、答弁は入るか入らないかということをお答えいただければいいんですけれども。

○衆議院議員(山下貴司君) 一般論として、指導、支援を行う主体というのが様々あり得るわけでございます。これは官民問わずというところでございます。そういった中において、その指導、支援ということは、行う主体が有効か、これがこういう支援をした方がいいかどうかということは判断することになろうかと思います。

○小川敏夫君 答弁の中で、この法律は基本法であるから、具体的な権限を直接付与したものではないという御趣旨のお話がありました。

ただ、これは基本法でこういうふうにありますと、これを具体化する法律はこの基本法に従って制定しなくてはいけないわけですよね。ですから、今、具体的な権限を付与して、この法律自体が具体的な権限を付与していないと言うけども、この法律を具体的に実施するための法律はこの基本法に沿ったものじゃなくちゃいけないわけです。だ
から、基本法だからいいんだというお話では困るんで、やはり、基本法が仮に間違ったことを含んでいれば、やはり基本法の段階からこれはきちんとしなければならないと、こういう観点で質問をしておるわけです。

ここで行う、では、指導を行う主体として警察が入り得ると。指導が必要かどうか、これは警察が、つまり指導を行う主体が警察であれ何であれ、指導を行う主体が判断するんだと。そして、具体的に行うその指導、支援というのは具体的にどういうことを指しているんでしょうか。

○衆議院議員(山下貴司君) 例えば、この指導の中には、これは、これ一般的な法令用語としての指導ということであれば、例えば栄養指導、進路指導、生活指導というものも含まれると思います。また、ほかの法律に特段のある場合、例えば職業安定法による二十二条の公共職業安定所による職業指導であるとか、あるいは精神保健、精神障害者福祉に関する法律の六条二項の精神保健福祉センターによる指導、そういったものも考えられるところでございます。いずれにせよ、それらの法律の趣旨、定義、要件に基づいて行われるというものでございまして、本法案はそれを排除するものではございません。
ただ、この基本理念としてこの本法を作らせていただいたのは、例えば先ほどの二項でいえば、特性に応じて必要な指導又は支援を行うということを考えておりますので、不必要なものというものは、これはやるというのは本法の基本理念に反するというふうに考えております。

○小川敏夫君 理念としては分かりますよ。必要な支援を行うので、不必要な支援を行わないと、これは理念としては当たり前のことでして。だけど、必要かどうかは、その指導を行う機関が、例えば警察が指導を行うなら警察が判断するわけですよね。そういうことになるわけですよね。そうすると、そこで、例えばその必要かどうかの判断を間違えた場合、あるいはもっと進めば、この法律を濫用するという場合を必ず防止するという仕組みがこの法律の枠組みの中には私はないように思うんですがね。

要するに、話は少し変わりますが、例えば、警察官の職務執行法で職務質問というものがあります。あれは任意です。任意捜査ですから、意に反しては行ってはならないことになっている。だけど、実際にはどうかと。歩いているところを呼び止められれば、自分はもうこんなの協力しないからやめてくれ、もう行くよと言っても、前を立ち塞がられると。その横を擦り抜けようと思っても、横の方に警察官が動いてきて実際上行動を制約されるわけです。

手は出しません。捕まえません。だけど、任意といいながらかなり意思を、自由意思で全く完全な任意という形ではなくて、かなり強硬に行われていると。そこでどいてくれといって手を出せば公務執行妨害で逮捕されると。ですから、職務質問を仮に受けたことがある人がいれば、そんな職務質問が任意だといいながら、実際の運用はかなり任意性が制約されているというふうに思うんですがね。

そこで話がまた移りますが、犯罪の予防は警察庁の職務に入るわけです。ですから、犯罪の予防だということで警察がこの人を指導しようと、指導が必要だと警察が判断すればその人を指導することができると。その指導は当然断ることができるといっても、じゃ、なぜ指導に応じないんだと、指導に応じないことの説得することは許されるわけですよね。指導を拒否する者に対して強制的に指導はできないかもしれないけれども、指導を応じない者に対して指導に応じるよう説得するということは私はできると思うんですよ。そうすると、職務質問の例じゃありませんけれども、この指導に名を借りてかなり強硬なことが行われるということが許される余地がこの法律の中にあるのではないかと、私はそういう懸念から聞いておるわけでございます。

そして、この二十一条で、そうした指導が警察が行う、そして必要かどうかは警察が判断すると、そして指導の内容も行う警察が判断する、そして指導が嫌だと言ってもそれを指導を受けるように説得することはこれは認められると、こういう中で、また話が戻るわけでありますけれども、この対象者は非常に広い。

例えば、今団塊世代以上の人が昔、学生運動などで公務執行妨害で逮捕された、有罪になった事例があると、あるいは、有罪にはなっていない、検挙されただけで釈放されたということもあるけれども検挙歴があると、そうした人に対しても、この法律上警察は指導を行うことができるわけです。あるいは、軽犯罪法も入ると。じゃ、政治家があちこちにポスターを貼る、一軒一軒承諾を受けて貼れば何の問題もありませんけれども、所有者や管理者の承諾を得ないで貼ってしまえばこれは軽犯罪法に抵触する可能性があるわけであります。こうしたものまで対象に入るという、まさに、非常に緩い、もう国民のほとんど誰しもがこの指導を受ける対象に入るというこの規定の中で、この二十一条では、警察が指導の主体となって、その指導が必要かどうかを警察が判断すると、指導の内容も警察が判断すると、そして、指導が任意だといっても、指導に応じない者に対して指導を受けるよう説得を続けることはできるということであれば、これは、警察なり、あるいはそうした一つの権力側がこの法律の本来の理念を外れてこの法律を利用するということができ得るのではないか、そういう余地をこの法文では残しているのではないかと、私はそういう懸念を抱いて質問させていただいておるわけでありますけれども、この私の懸念を解消するような手だてはないんでしょうか、あるいは、どう考えていらっしゃるんでしょうか。

○衆議院議員(山下貴司君)本当に、先生も法曹の先輩として、まさに、私も弁護士でございますので、そういった思い、共有する部分はございます。

ただ、そういったこともありまして、この法律につきましては、まさに、例えば警察やあるいはそういったところに直接権限を与えるものではございません。これは警察官職務執行法とは若干違うところであろうかと思います。そして、まず、これについては理念のところで、繰り返しになりますが、特性に応じ必要な指導又は支援を行うというところで幅広く規定しておるわけでございます。そしてまた、主体については官民を問わないと。例えば、協力雇用主であるとか保護司の先生方、こういったものも幅広く含まれておるわけでございます。二十一条の場面においては特にそうでございます。

そうした中で、再犯防止推進計画、そういったものは法務大臣が主体となってしっかりと決めていただくということで、指導及び権限というのを本法に基づいて、ある意味、白地委任をいただいたような形でやるということは考えておらないわけでございます。そういった計画の中で本当に必要なニーズに応じたものが提供されるのではないかということを期待しておりますし、そういう思いを持って再犯防止推進計画、国そして地方というものを規定させていただいている、そして基本理念を規定させていただいているところでございます。

○小川敏夫君余り長い答弁を長々といただくと議論が煮詰まらないんですけれどもね。

同じことを言うけど、基本法であっても、これを具体化するときにはこの基本法に従って具体化するわけですから。それから、そもそも犯罪の予防、防犯は、これ警察庁の所掌事務でありますから。そして、この法律が具体的に指導する権限を与えていないと言うけれども、元々指導することは警察は任意にできるんですよ、今でも。この法律がなくたって今でもできるんです、任意なんだから。任意なら捜査もできるし指導もできるんです。ただ、その任意に関して、さらにそれがかなり強硬になるということのお墨付きを与えてしまうのではないか。

私は、犯罪という、予防の名の下に、そうした、過去にそうした犯罪歴がある人に対して必要以上なそうした干渉が行われるのではないか。これは、本来の犯罪を犯した者の社会復帰を支援するという目的とは離れてこの法律が使われる余地がある。余地があるから私はその問題を指摘しているわけで、この法律が必ずそういう警察のそうした不当な干渉を呼ぶものだと断定するわけじゃありません。この法律はいい法律、理念はいい法律だと思いますよ。これを、その理念をしっかりと実現しなくちゃいけないけれども、でも、法律である以上、やはりそうした濫用があってはならない、あるいは、そうした不当な国民の権利を侵害するようなことの、悪用されるような余地があってはならないので、私はそうしたこの法文の書きぶりについてそうした配慮を必要ではないかというふうに思っております。

以上で質問を終わります。